干すだけ・火で炙るだけの番茶
葉のついたまま30センチほどに切りそろえて、日のあたる場所に吊るして干します。乾燥した茶葉と、カワラケツメイと混ぜて焙じて出来上がりです。・・・福井県。
他に島根県など各地に陰干しして使うとき鍋で炒る番茶があるそうです。
焼き茶
茶の木を切り取って焚き火で炙り、薬缶で煮出す。林業者の間では今でも飲まれているそうです。
蒸す・あるいは煮て作る番茶
煮る番茶
ヤマチャの古木を切って葉がついている部分を煮え湯に入れる。赤く色が変わってきて、枝を振るうと葉が落ちるまで茹でる。この葉をカリカリになるまで日向で干す。飲むときは薬缶で煮出すと良い。・・・愛知県
蒸す技術
現在の煎茶は、蒸しが非常に重視されていますが、高級な抹茶ももちろん蒸して作ります。ただ「揉む」という工程が含まれていません。
湯通ししてから揉む番茶
湯びく茶
若葉を摘み取り、手のついた籠に入れて熱湯に煮付け、箸でかき混ぜ、葉が箸にくっつくようになったら、水を入れた半切に入れて冷やしてからよく絞り、少し乾かしてから焙炉にかける。(近世の《農業全書》から)
煮て作る番茶に美作番茶がある。蒸す、炒る、の中間に位置するのが「煮る」という加工法だそうです。
炒って揉む番茶
肥後の釜炒り茶(青柳製)
摘み取った茶葉を釜に入れて炒る。むらなく茶葉が熱せられるように混ぜる。茶葉がしんなりしてきたら筵の上に広げて、両手で揉む。炒る・揉むという動作を一セットとすると同じ茶葉に対して数セット繰り返す。(この製法から、揉むという工程が、生まれたとも考えられます。)
嬉野式釜炒り茶(嬉野製)
青柳製が、平釜を水平に据えるのに対し、釜を45度傾け、この釜に正対して茶葉を炒る。火の焚き口が竈の裏側にあって、炒る人が熱や炎を受けないようにしてある。
漬け込んで発酵させる番茶
自家発酵と後発酵
お茶の葉には木から切り離されると同時に、自ら発酵を始める酵素が含まれています。ごく簡単に言えば、その酸化酵素を十分働かせると紅茶に、途中で止めるとウーロン茶になります。もちろんその途中にさまざまな段階があり、いろんなお茶が出来ます。それに対して、大きな意味での緑茶は、いったん何らかの熱処理をして茶葉自身が持っている酵素を殺す(殺青)ことによって、緑茶独特の香りや色、あるいは味を保つことになります。その熱処理の方法が多様に残っています。
もうひとつ別の意味で発酵させるお茶があります。茶葉の持つ酵素の力でなく、外からとりついたカビやバクテリアの力で発酵させるもので、これを紅茶の発酵と区別して後発酵(こうはっこう)と呼びます。(タイやミャンマーの漬物茶、食べるお茶)。
日本でも食べることはしないが、後発酵茶が各地に残っています。石鎚黒茶・土佐の碁石茶・阿波番茶・若狭の黒茶など。
口切り茶(口切り新茶)
“口切り新茶”といっても、一般の人には耳慣れない言葉かもしれません。新茶といえば5月ということで、それが常識となっていますが、昔は、5月に摘んだ新茶を、茶壷に詰めて、涼しいところに置き、静かにねかせました。ひと夏越す間に熟成して深みのある味と香りを持つようになります。“後熟の香味”ともいいます。
後熟茶
後熟(こうじゅく)、茶の貯蔵中に起こる香味の変化、主として水色、香味がよく変化すること。熟成ともいう。
何でもありの日本茶
多様な技術の組み合わせ
日本各地にはさまざまな番茶がありますが、茶の製法には、茶葉が持つ酸化酵素を殺す(殺青)ための干す・蒸す・煮る・炒るの基本的方法に、揉むか揉まないかという方法が組み合わされてさまざまなお茶が出来ます。そして、この中に入らないもうひとつの方法が、加熱処理後に漬け込んで発酵させてから乾燥させる後発酵茶があります。
日本の番茶の種類を大別すると15,6種となり茶の好みと食物の好みとをセットにした、地域性が認められるそうです。残念なことにこれらの番茶は衰退の一途をたどっています。それは、商品化が進むと共に静岡茶に代表される《蒸し製煎茶》に生産の重点が置かれるようになったからだそうです。
中村羊一郎著「番茶と日本人」 発行所 (株)吉川弘文館
朝日くらしの風土記 「くつろぎの茶」発行所 朝日新聞社 1982
新茶業全書 発行所 静岡県茶業会議所
を参考にしました。
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